❅·̩͙19 ページ19
岩本と阿部が仲睦まじく
話しているのを聞きながら
渡辺をちらりと見た。
合うと思っていなかった視線が絡んで
何故か逸らしてしまう。
『なに笑』
「いや、何もない」
『佐久間大丈夫そうだった?』
「…足から血出てたけど、それ以外は大丈夫そうだった」
そっかあ、とさほど心配していなさそうな口調。
心配よりも信頼の方が強いんだろう。
10人を1人でやったというのだから、そりゃ信頼されてるわな。
同じ制服を着た人達が駅に向かって歩く道を途中で外れて
裏路地のようなところへ入ると、前の広い背中が突然立ち止まった。
危ない、鼻が潰れるところだった。
何かあるのかと背中から顔を出そうとすると、
大きい手が後ろから伸びてきて制される。
岩「翔太、Aちゃん頼んだ」
『なに、どこのやつら』
阿「BEASTだ」
それって佐久間が倒したやつらの名前?
今この目の前にいるのか。
渡辺にすっと手を取られる。
さっきのニヤついた顔から一転、真剣な表情で私を見つめていた。
『行くぞ、照と阿部ちゃん任した』
ひらひら手を振る2人に背を向ける。
だが。
「 あれー、女がいんじゃーん笑 誰の女?お前? 」
卑怯にも挟み撃ち。
ごついバイクで道を塞いで笑ってる。
額にタトゥーが入っている坊主と、赤髪モヒカン。
渡辺が私を背に隠す。
岩本より少々頼りなくはあるが、
なにかの覇気でも出ているのか大きく見えた。
阿「動かないでここに居てね」
阿部がニコッと笑った。
岩本が右手を上げた瞬間、3人が散る。
両耳から入ってくる生々しい音と呻き声。
人生で人が人を殴る音を実際に聞くとは思っていなかった。
体感にして5分。
見てられなくなり目を瞑った私の肩に触れた手。
目がギラついた渡辺が、私を覗き込んでいる。
『だいじょーぶ?笑 走んぞ』
「え、まだ2人が」
『任しときゃいーの、負けねぇよ』
さっきまで人を殴っていた手が優しく私の手を包む。
岩本が戦ってるすぐ側をすり抜けて余裕そうに笑っていた。
阿部はこっちに手振ってるよ。すごいな。
そのくせ、視界に入る拳はしっかり交わしてカウンター攻撃だし。
白雪って、一体どんぐらい強いんだろう。
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hrr - おもしろくて一気読みしました!続き楽しみにしています! (4月10日 14時) (レス) id: 5934ce0412 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カジャ | 作成日時:2024年3月20日 19時