空の街

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「まずいこほ？」


もぐもぐしながら見れば須藤は真剣な顔をしていて


「営業の、ほら前色々あった鍋川さん覚えてます？」

「あぁうん」

「あの後同じ営業の子と付き合ったらしいんですけど
ちょっとトラブって実質クビになるみたいっす」

「え？クビ？」

「で、まぁ禁止ってわけじゃないみたいなんですけど
他にも同じ部内で付き合ってる奴ら、トラブル防止で
バラけさせるって噂が…」

「…え」

「最悪地方かも。俺らの事はまだ土井にしか言ってな
いし、課長と桑田さんなら多分大丈夫だとは思うんす
けど、課長の立場もあるし巻き込まないに越した事な
いと思うんで…」

「……別れ、る…、？」


言えば怖い顔で睨まれた


「付き合ってんの内緒に出来ます？」

「あ、うん。言わなければいいんでしょ？」

「言わなくても空気とか会話とか…」

「でも社内だと前と変わんなくない？付き合う前から
タメ口だし須藤」

「…まぁ、」


だから今日は家が良かったのか…


「てかトラブルって何？」

「あー…同じ社内で2人、取引先3人、無理矢理され
そうになったって女の子が5人訴えたらしいっすよ」

「え…、」

「6人目にならなくて本当によかったですね〜〜？」


目で咎められれば逃げ場は無くて


「あっ！そうだ今度休みどこか行こっかっ？」

「はいはいもう言いませんよ」

「……、」

「行きたいとこある？」

「んー…遠く？」

「ざっくり〜」

「何か美味しいもの食べたいな〜」

「遠くて美味いもの……じゃーあそこは？去年出張で
通りかかって行けなかった蟹祭り？確か再来週の土日
だったはず」

「おー！いいじゃん蟹リベンジ！」

「日帰りは難しいんであの辺の温泉旅館泊まって一泊
二日で行きます？」

「いいね温泉〜っ！」

「んじゃ探しまーす」

「わくわく！」

「おー結構埋まってんなぁ…あ、この旅館は？そんな
高く無いしご飯もうまそう」

「いいね！」

「んじゃ予約しまーす」

「いぇーい！」



ん……？一泊二日…？



「っ、…あの、やっぱり近場にしませんか…？」

「何で？」

「何か、すごい近くに行きたい！」

「はぁ？」

「日帰りで日帰ろう！」

「もー予約しちゃいましたー」

「うそっ！」

「本当」

「……、、」

「たのしみだなぁ〜」

「何が楽しみ…？」

「蟹？」

「蟹…だよね、」

「何？」

「いや、」


ぐいっとビールで誤魔化せば、頬杖をついて私を見ながら幸せそうに飲んでる須藤に気づいて、一気に一本目を飲み干した

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