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「ト、トランクに乗れと言うことでしょうか…それとも上に乗りますか…?」
「いや待て待て。俺を何だと思ってんだよ。助手席!」
「そんなそんな…私なんか先輩の足元にしゃがんどくだけでも…」
「お前それは俺が捕まるわ」
先輩に促されるままに助手席に座る。
今まで乗ったどんな助手席よりも緊張するんだけど!?
「…シートベルト早くしろ」
「へ、へいっ」
シートベルトをしようにも緊張で手が震えてうまくできない。
先輩はずっとこっちガン見してるし!そんな綺麗なお顔で見ないで!心臓がもちません!
なんて思いながら必死にやっていると急にシートベルトが引っ張れなくなった。
「あれ、あれ、」
「…一回それ戻せ」
シートベルトから手を離して一度戻した後つけようとした。
「動くな」
先輩が私に覆い被さるまでは。
「へ、ま、え?」
「お前鈍臭すぎ」
そう言って先輩はベルトを引っ張り出ししっかりとつけてくれた。
じゃあ行くぞ、と運転し始めた。
…え、待って?何が起こった?推し様が私の上に覆い被さって?シートベルトつけてくれて?
てか顔近くなかった?口臭とか体臭とか大丈夫だった?あれ、そういえばメイク崩れとか…
「うわああああ…」
「何1人で百面相してるんだよ」
「いや、その…」
「マジでお前って面白いのな」
前を向いたままそう言う先輩にキュンとして。
「推し様カッコよすぎ…どうしよう今すぐに抱きつきたい…」
「やめろ。今だけは絶対にやめろ」
「…つまり普段ならいいということですね!?」
「なんでそうなる」
先輩は家までしっかり送り届けてくれた。
私が家の前で先輩の車を見送っているとブレーキランプを2回点滅して帰って行った。
なんかの歌でブレーキランプ5回がアイシテルだったような…
「はっ!好き!?」
2回だから好きってことだ!とふわふわした気持ちで家に帰りお礼のLINEを入れようとしたら
『寝ろ』
ブレーキランプの答えが来てました…。はは…
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作者名:雪野真哉 | 作成日時:2024年3月15日 11時