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あの後、タクシーが来たので私に抱きついたままの康二と一緒に乗り込み、康二の家まで送り届けた。
タクシーに乗ってから彼は本格的に寝てしまったので家まで運び入れるのに一苦労だった。
タクシーの運転手さんを長時間待たせるのも迷惑だろうとお金を払って帰ってもらって。
「康二家ついたよ〜」
「ん〜…」
「カバン漁るからね〜」
カバンを漁って鍵を取り出して家の中に入り康二をベッドに放り投げて。
康二が起きた時に飲めるように勝手にお味噌汁を作っておいた。
ベッドで眠る康二のそばに行き頬を軽くペチペチと叩きながら声をかける。
「康二帰るからね。鍵はポストに突っ込んどくからね」
「ん〜…A〜」
「はいはい。帰るからね」
そう言って立ちあがろうとしたら
「へ、わあっ」
康二に腕を引っ張られて康二の上に乗っていて、
「こ、康二」
離れようとしたのに頭を抑えられて康二に…
「う、うわあああ…」
「…い、おい！A！」
「へ、へいっ、」
「なんだその返事は。んでお前さっき頼んだ資料はどうなってんだよ」
「え、あ、はい今すぐ」
大好きな大天使渡辺先輩に話しかけられてるのにも気づかないくらい昨日の康二の様子が頭から離れない。
唇に感じた熱も、彼のやけに熱っぽい瞳も、ふわっと香る彼のオレンジの香りの香水も。
「どうしたらいいんだよぉぉぉ…」
「Aちゃん今日変だねぇ。どうしたの？」
「いやぁそれが…ん…？」
「うん。それがなぁに？」
「うわああ！深澤先輩っ！びっくりしたぁ！え、なんですか！？」
右手を左手の肘に当てて左手を口元に持っていった体制でふははと笑う深澤先輩。
見るからにモテるんだろうなぁという感じの人。
同じ部署だけどなんだかんだ初めて話した気がする。
「Aちゃんってさ、いつもなべに天使様〜とか言ってる子だよね。いつも面白い子だな〜思ってたんだよね」
「あはは…お恥ずかしい…」
「んで。何があったの。さっき藤原竜也みたいな声出してたけど」
「え、ああ…ええっと…」
「ここじゃ話しにくい？場所変える？」
そう言って私を連れ出そうとしてくれる深澤先輩。
私も1人で抱えるには辛いしかといってなみちゃんにも相談しにくかったので話を聞いてもらうことにしてついて行くことにした。
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作者名：雪野真哉 | 作成日時：2024年3月15日 11時
